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第68回 バックパッカー ベトナム編12 「クイニョンからホイアンへ」 |
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クイニョンの静かな余韻を背に、相棒のミンスクをさらに北へと走らせた。次なる目的地は、ホイアンだ。
快調にスロットルを開けていたはずが、見渡す限り人家らしきものが見当たらない乾いた一本道で、後輪から嫌な振動が伝わってきた。パンクだ。古いバイクにトラブルは付き物とはいえ、日陰ひとつない路上での足止めは勘弁してほしかった。次の街まで何キロあるのかも見当がつかない。容赦ない日差しの中、エンジンのかからないミンスクはただの重たい鉄と化していた。汗だくになりながら、絶望的な気分でバイクを押して歩いた。足元TEVAのサンダルだったし。
すると、どこからともなく二人の地元の少年が現れた。言葉は全く通じないが、懸命に身振り手振りで何かを訴え、こっちへ来いと手招きしている。異国の路上で急に声をかけてくる連中には警戒するのが鉄則だが、この時の自分にはなす術がなかった。怪訝に思いながらも、言われるがまま彼らについていくしかなかった。
小道を少し入った先に小さな修理工房があり、彼らは慣れた手つきでミンスクのタイヤを外し、あっという間にパンクを直してくれた。テキパキと動く少年たちを見ながら、一瞬でも疑った自分が心底恥ずかしくなった。あの少年たちがいなければ、マジでバイクを道端に放置して、通りがかりのバスに飛び乗っていたかもしれない。あの灼熱の中で助けてくれた、間違いなく恩人だ。
気を取り直して走り出し、どうにか目的地のホイアンに辿り着いた。かつて国際貿易で栄えたというこの街は、古い木造建築や黄色く塗られた壁が続く、なんとも可愛らしいのどかな場所だった。ベトナムの紙幣にも描かれている「日本人橋」なんてものもある。ちょうどユネスコの世界遺産に登録されたばかりだったと思うが、観光地特有の擦れっ枯らしな空気はなく、街全体に素朴でゆったりとした時間が流れていた。
腹が減ったら、日本の伊勢うどんがルーツとも言われる名物の「カオラウ」をすすった。夜になると通りには無数のランタンが灯り、それが黄色い壁を照らして幻想的な雰囲気になる。ミンスクを休ませて、自転車を借りてみるのも悪くなかった。旧市街から15分ほどペダルを漕ぐと美しいビーチが広がっていて、そこで波の音を聞きながら、ただぼんやりと過ごした。
ホーチミンを出発してからというもの、ひたすら土埃にまみれてスロットルを開け続けてきた。パンクの絶望から救ってくれた少年たちの親切と、この黄色い街ののんびりとした空気は、張り詰めていたバックパッカーの心と身体を、ゆっくりと解きほぐしてくれた。
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